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2011年12月31日土曜日

忘年会

12月28日は恒例の忘年会でした。

いつ頃からかMCはコスプレをさせられることになってまして、今年は見ての通り誰がなんといおうと大活躍のあの方です。ラスタマンでもプレデダーでもありません。これ、ユニも普通のTシャツをわざわざ青く染めて手製のアップリケをつけたもの。アシスタントのさっちゃんの手作りです。

これまた恒例、サイバラよりも以前からやっている記憶画力対決のトリは、出渕裕=左と横山宏=右という豪華な組み合わせで、お題は「キングジョー」。しかも審査員は氷川竜介さん! しかし、いきなり「キングジョー」といわれて躊躇なくものすごい速さで描き始める人(二人とも)というのを初めて見た気が。現場の軍配はブッちゃんに上がったのだが横山さんのジョーもかっこいいね。皆さんの判定は。
写真:桑島龍一

ゲット スマート実況


12月11日は日曜洋画劇場『ゲット スマート』のオンエアに合わせて、主演のスティーヴ・カレルの声を担当した江原正士さん(写真左)と僕とで吹替に関するツイートコメンタリーを行いました。アン・ハサウェイ担当の田中敦子さん(@atuwosyousa) もご自宅より参加。

まず映画の解説から。これは元々米NBC制作の60年代のTVシリーズのリメイクで、日本でも「それ行けスマート」というタイトルで、66年から67年までNET(現テレビ朝日)68年から69年まで東京12チャンネル(現テレビ東京)で放送されました。

外国TVドラマにもその時々の、たいていは映画のヒットに呼応した流行りがあります。60年代初期までは西部劇が主流でしたし、その後戦争物が流行りました。やがて007シリーズがヒットすると、TVでも「0011ナポレオン・ソロ」を筆頭に「ハニーにおまかせ」「アイ・スパイ」などスパイ物一色になりました(蛇足ですが、70年代は映画『ダーティハリー』とTV「刑事コロンボ」のヒットで刑事物一色になります)。

「それ行けスマート」はそういうスパイ物のパロディとしてメル・ブルックスらが企画したドラマで、スマート役のドン・アダムズの吹替は藤村有弘が、エージェント99は久里千春(のち小原乃梨子)、チーフは塩見竜介、ジーグフリードは川久保潔が担当していました。映画にも登場する靴の電話はTV版の有名な小道具です。

『ゲット スマート』は吹替付きのDVDが出ていますが、今回のOAは「日曜洋画劇場」用に新たに新録されたもの。吹替キャストは

スマート=エージェント86/スティーブ・カレル(江原正士)
エージェント99/アン・ハサウェイ(田中敦子)
エージェント23/ドウェイン・ジョンソン(小杉十郎太)
チーフ/アラン・アーキン(小川真司)
ジーグフリード/テレンス・スタンプ(大木民夫)
大統領/ジェームズ・カーン(内海賢二)
ブルース/マシ・オカ(関智一)
ロイド/ネイト・トレンス(木村昴)
シュターカー/ケン・ダビティアン(宝亀克寿)
ララビー/デヴィッド・ケックナー(塩屋浩三)
演出:鍛治谷功 翻訳:藤澤睦実 制作:東北新社

これだけでも相当に豪華なメンツです。最近はTVの洋画番組でもDVD版をそのまま流すケースが増えているのですが、久々に日曜洋画の心意気を見た気がします。ブルース&ロイドがドラえもんコンビなのはテレ朝らしい面白いキャスティング。さらにカメオ出演のビル・マーレイは安原義人!(実は江原さんもビル・マーレイをたくさんやってらっしゃいますが、安原さんも当番は多い)加えて、短い出演ですが大友龍三郎、大塚芳忠、田中秀幸さんまで登場という、てんこ盛りぶり。

超豪華な吹替メンツだったので、リプライで予算についても幾つか質問を受けました。これは現場の方々は立場上答えづらいと思うので、僕個人の責任で。吹替の音声制作の予算はDVDよりTV版のほうが全然潤沢です。とはいってもあくまで比較の話であり、洋画番組も他の番組同様、この節なかなか厳しい制作環境にはあるのですけど。

僕の考える贅沢な吹替というのは、例えば有名俳優がワンカットだけでもカメオ出演していたとしたら、その可笑しさや効果を吹替版で忠実に再現するためには、声優さんもそれに見合う(出来ればフィックスの)方を起用することだと思うのですね。実際は予算の問題等でなかなかむずかしいのですが、この日のキャスティングには、予算を度外視してなんとかTVオリジナルの吹替を楽しんでもらおう、という制作現場の熱意が現れていました。

もちろんDVDの吹替にも意義はあります。幾つか確認のためDVD版(こちらはスマート=横島亘、99=林真里花、23=楠大典、チーフ=佐々木敏、シーグフリード=山野史人というキャスト)も観てみましたが、吹替台本はかなり原画のセリフに忠実でした。それにもちろんノーカット。劇場版やDVD版はオフィシャルなものとして残るので、そうしたことがまず第一に求められます。反面、お行儀はいいけどあまりお遊びが許されない。

これに比べてTV版は最初からCM中断やカット前提、さらに視聴率も気になりますから、暴論に近い極論をすれば「その映画を使って新しい作品を作る」くらいの感じで演出がなされます。キャラクターはより際だつように、セリフもわかりやすさを優先した翻案が多くなります。例えば今回原画で「チャック・ノリスか」と言っていた部分は、TV吹替ではスティーヴン・セガールになってました。

そういうわけであくまで僕個人の考え方ですが、TVの外画番組は「原画の映画スタッフ+吹替制作スタッフの共同作品」という気持ちで観ています。といっても原画のいちばんキモの部分を損なってはいけません。原画に風格があれば吹替版もそうあるべきでしょう。いっぽう原画がお遊びの多い映画だったら吹替もたくさん遊んでかまわない、と思っています。ただしセンスは問われる。コメディは大真面目に演じてこそ可笑しいので、勘違いの方向にふざけすぎると逆効果になることも多い。今回はなかなかバランスがよかったのではないでしょうか。

楽しかったけど、しかし、リアルタイムの臨機応変なツイートはデータ的なことを間違わないか緊張するね(ただでさえよく間違うのに)。江原さん、田中さん、そしてふきカエル @fukikaeru の中の方々、どうもお世話になりました。

そういえば原画にも有名スパイ映画のパロディシーンが幾つか出てきますが、今回の吹替メンツ、なんと過去にボンド役を演じた人が、内海賢二、小杉十郎太、小川真司、大塚芳忠、田中秀幸、江原正士と6人もいました。……という話をしていたら、翌日の田中敦子さんのツイートで「あつをも007消されたライセンスのボンドガールよ(#^.^#) 」というご指摘が。そうだった(ヤマちゃん版で)! 不覚!

『ゲット スマート』アテレコの現場レポート↓

Ciao! ムーンライダーズ

12月17日、チケット購入時にはそんなことになるとは思ってもいなかったムーンライダーズの暫定ラストコンサートを観に中野サンプラザへ。着くと会場前には幾重にも蛇行した長い行列が。

ライヴはホールも含めた複数の場所でのメンバー一人一人の同時多発パフォーマンスから始まった。それから至福の2時間余。楽しくてかっこよかった。いつだってシャイでクールでストイックなバンドで、今宵もMCはほとんどなかったけど、心なしかオープニングからラストまで、いつもより客との距離を近くしているように感じられた。

何人か事前にツイッターなどで「会場で会いましょう」と言葉を交わしていた方達がいたのだが、終演後の人混みで確認出来ず会えなかった人も。でもまあこのバンドのファンはバンドと同じメンタリティの人が多いから「遇えれば僥倖、しつこく探し回るには及ばず」と勝手に判断し、めぐりあえた古くからのライダーズファンのまついなつきさん達と鍋を食べに行く。まついとは、同じく筋金入りのムーンライダーズファンであった故ナンシー関さんのお別れ会に二人で行って、堀井憲一郎氏のヨメから夫婦と間違われた、という過去を持つ。

写真は演出で使われ客席に転がってきた風船。帰路、昇ってきた下弦の月をバックに撮りました(これを「下弦」とつぶやいたら「上弦ではないのか」とツイッターでひとしきり論議に。東の空に昇りたてでこの状態の月は下弦なのです)。

達郎さんライヴ

12月25日クリスマスは達郎さんのライヴで、先週のムーンライダーズに引き続き中野サンプラザへ。こちらは全国ツアー真っ最中で、しかも例によって3時間半休憩ナシのステージ。まもなく還暦とは思えないすごいパワーです。

同じ東京人でも慶一さんとは違い、達郎さんのMCはもう喋る喋る。客イジリも、逆に客のヤジへのリアクションも頻繁で、しかしそれは昔から変わらないことなので、もはや名物の一つになっている。喋らない山下達郎なんて。

過去にはそれがうまくかみ合わないこともあり、ちょっとした緊張状態というか客席の反応(or無反応)に苛つかれる姿も目にしたこともあるけど、いやずっと見続けている者からすればホントに丸くなられました。ライヴは客もまたその出来の一手を担う責任がある、というようなことを達郎さんはよくインタビューなどでお話しになっているけれども、この夜は「いいお客さんで本当にやりやすかった」とのことだった。個人的にもここ何度かのライヴでいちばん楽しめたかもしれない。

ツアー途中なのであまりネタバレ的なことは書けないが、震災があり、新譜にもその影響は現れていたので、実は今回のツアーでも、ややメッセージ性の強い曲やMCが多くなるのでは……と思っていたら(危惧ではなくて、それはまあ当たり前のことだろうと)この予想は外れ、ふだん通りのステージがあった。むしろMCでも災害にはくどくは触れず、曲も明るいアップテンポの曲が多かった印象だ。歌唱・演奏はあらためて書くまでもないが素晴らしいの一言。プロフェッショナルなステージでした。新加入の宮里陽太さん(都城在住で通いで参加だという)のサックスもとてもよかった。


物販コーナーで販売されている拙著『タツローくん 2011 EDITION』と「タツローくんカレンダー2012」も、おかげさまで売れていたようでございます。どうもありがとうございます。

カキューン!! 新動画

2010年から関西テレビの深夜バラエティ『カキューン!!』のアイキャッチアニメをそうまあきらさんと一緒に担当していますが、新ヴァージョン2本が新たに加わりました。声はいつもの藤本景子アナ。

新作も含め2011年版のすべての動画6本がオフィシャルサイト(→ここ)で観られます。うち2本ほどが深夜らしくお色気篇。

2011年10月31日月曜日

SF映画ベストテン

朝日新聞10月1日朝刊の「beランキング/もう一度見たい!! 傑作SF映画」に自分のSF映画ベストテンと併せてコメントしています。

まず朝日の読者アンケートのベストテンはというと

1 猿の惑星
2 スター・ウォーズ
3 バック・トゥ・ザ・フューチャー
4 E.T.
5 ターミネーター
6 ミクロの決死圏
7 エイリアン
8 2001年宇宙の旅
9 日本沈没
10 未知との遭遇

『ゴジラ』がありませんね、と担当氏に問うと「今回は(日本の)怪獣映画はオミットしました」とのこと。怪獣映画は怪獣映画だけでそのうちベストテンを組みたいとの理由からだそう。1位の『猿の惑星』は続編数本とリメイクが2本あるが、68年の第一作である。猿強し。

いっぽうでこの種のアンケートでは必ず上位に食い込んでいた『2001年』が8位というのは意外な気がする。もっとも公開当時は星新一はじめ日本のSF界でも『2001年』よりは『猿』のほうを評価する人は多かった(小松左京は『2001年』を初期から評価)。
参考:「キネマ旬報」1968年5月下旬号、徳間書店ムック「スペースSF映画の本」1978年

ちなみに「SFマガジン」2010年3月号で高橋良平、添野知生、柳下毅一郎、鷲巣義明、渡辺麻紀の各氏が選んだオールタイムSF映画ベストテンは以下の通り。

1 ブレードランナー
2 キング・コング(1933年版)
3 メトロポリス
4 スター・ウォーズ 帝国の逆襲
5 2001年宇宙の旅
6 エイリアン
7 ヴィデオドローム
8 ターミネーター
9 ゴジラ
10 未来世紀ブラジル

で、僕のベストテンだが、あえて朝日の読者ベストテン以外の作品から選ばせてもらった。上の二つを比較するとおわかりの通り、一般アンケートとSFファンの評価にはだいぶ乖離がある。記事には読者アンケートと僕のベストテンとが併記されるので、より多くの作品をこの機会に知ってもらいたいという気持ちがあったからだ。

1 ブレードランナー
2 時をかける少女
3 キング・コング(1933年版)
4 宇宙戦争(2005年版)
5 攻殻機動隊シリーズ
6 月に囚われた男
7 ヴィデオドローム
8 コンタクト
9 禁断の惑星
10 ギャラクシー・クエスト

上は新聞記事の表記通りだが、3位と4位はわざわざ誤解のないように新版旧版の断りを記載してあるのに、実は4本もある『時をかける少女』が公開年未記載で載ってしまったので、若い読者はアニメ版などと勘違いしたかもしれない。僕のファンにはいまさら断るまでもなく1983年の原田知世版です。これは入れないと「とり・みきのベストテン」の意味がない。

1位の『ブレードランナー』は朝日のアンケートでは29位だったそうで、この映画の評価に一般観客とSFファンの想いの違いがいちばんよく表れている気がする。『ブレードランナー』はお話がどうというより、観ている間じゅうずっと幸せな映画だった。その後も環境映像という感じで夜中になればビデオを回していた。

実際にはあんな酸性雨のゴミゴミした未来都市には住みたくもないが、それまで小説のSFを読んで自分が頭の中に描いていた世界と「SF映画」と称する作品の中に出てくるヴィジュアルとの間には大きな乖離があったのが、『ブレードランナー』でやっと初めて一致した。いや凌駕された。こういう画こそをずっと俺は観たかった、という多幸感があったのだ。

こうしたベストテンは上位3本くらいまでは不動だが、それ以下はその日の気分で他の作品と入れ替わったりする。最後まで迷った候補作は『アルファヴィル』『トゥモロー・ワールド』『未来世紀ブラジル』『バーバレラ』で、これらは4位以下のどことでも取り替え可能。また、読者アンケートとダブる作品は2001年宇宙の旅』『エイリアン』『ミクロの決死圏。『ミクロ』好きなんだよね。少年期はSF映画といえばイコール20世紀FOXというイメージだったけど(実際この3本も『猿』も『スター・ウォーズ』もFOX作品)そのテイストがいちばん出てて。

またまた熊本帰省

9月の末からまたまた帰熊。帰熊・来熊(きゆう・らいゆう)という言葉は地元の新聞では昔からよく見ていたが、他所の人には何のことやらであろうな。

何のことやらといえば、たまに帰省すると何でこれが家にあるのかよくわからないモノを発見してしばし悩む。今回は「南京たますだれ」とのみ書かれたビデオ。実家にはもうVHSデッキがないので中身の確認も出来ず。

9月下旬というのに熊本はまだまだ暑く連日30度超え。この夏、まだ鰻を食べていなかったので出前で頼む。ウナギの次はお彼岸なのでオハギ、と思ったが、どうもタイミングが悪くてなかなか買えず、連日ツイッターに「まだおはげない」とふざけたつぶやきをUPしていたら、古川登志夫さんにまで「今日はおはげましたか」と心配されるようになった。

森都心プラザから見た熊本駅
熊本市内もあちこち様変わりしており、駅前には「くまもと森都心」と名づけられた高層ビルが建設中。一部施設のオープン記念に映画『黄泉がえり』の上映に併せて梶尾真治さんのトークイベントがあるというので、連絡を取って、来月の小松さんを送る会用の動画を撮影しに急遽うかがう。するとなんと申し訳ないことに、梶尾さん、つぶやきをご覧になっていて、ご贔屓のお店のおはぎをおみやげにいただいてしまった。恐縮至極汗顔の至りとはこのこと。

ウナギとオハギだけで帰京するわけにはいかない。熊本とくればやはりラーメン。帰るたびに違う店をあれこれ試しているのだが、以前から気になっていた実家の近所のラーメン店で今回やっと食べることが出来た(実家といっても僕が上京後に引っ越したので周囲のお店は馴染みがないのです)。ご夫婦二人でやってる、いまだダイヤル式黒電話のカウンタ5席だけの店で、正直、味のほうは過剰期待はしていなかったのだが、いやこれが旨かった。何の奇もてらわないシンプルな本道の熊本ラーメン。自分的には幾つかの有名店より評価は上。また行く。

2011年9月1日木曜日

僕らの漫画

iPad/iPhone用のアプリ「僕らの漫画」に読み切り作品「Mighty TOPIO」で参加しました。600円。収益は東日本大震災の義捐金として寄付されます。アプリとしてはちょっと高いと思うかもしれませんが、購入すると第2弾・第3弾のマンガも無償アップデートで読めます。

参加マンガ家は、第1弾が、手原和憲、三宅乱丈、ねむようこ、ヤマシタトモコ、国樹由香、そらあすか、信濃川日出雄、とり・みき。第2・3弾掲載予定が、麻生みこと、井荻寿一、石田敦子、磯谷友紀、板倉梓、今井哲也、えすとえむ、喜国雅彦、小玉ユキ、さそうあきら、進藤ウニ、belne、村上たかし、ヤマザキマリ、ルノアール兄弟、和田フミエ。


ダウンロードの方法は「僕らの漫画」のここを参照。また右の「僕らの漫画」ロゴマークをクリックすると直接iTunesのプレビューページに飛べます。ipad/iPhone以外の電子出版は検討中、年末をメドに紙媒体での販売も計画中です。

滝口順平さん

8/29、滝口順平さんが亡くなられた。享年80。

TV放送黎明期、というよりラジオ時代からの大ベテラン。第一世代の声優さんは、ラジオの放送劇団(昔は放送局が劇団を持っていたのです)出身の方と新劇出身の方に大別されるが、滝口さんはTBSの放送劇団のご出身。

TV放送におけるアニメではない実写外画の吹替番組第1号は、KRT(現TBS)で1956年4月放映開始の子供向け西部劇『カウボーイ・Gメン』。主役のパット・ギャラガー(ラッセル・ハイデン)の声を生放送で担当したのが滝口氏だった。


といっても最初期の生放送吹替は1人から2,3人で男女関係なく何役もこなす、いってみれば活動写真弁士スタイルに近いもの。『カウボーイ・Gメン』では、滝口氏以外には相方のクロケット(ジャッキー・クーガン)を上田恵司氏が担当したとの資料もあるが、もちろん生放送なので音源は一切残っていない(※)。

文字通りの先駆者だったわけだが、それから亡くなる直前まで、ずっと現役第一線、しかも晩年もゴールデン枠のナレーションで活躍されたわけで、すごいとしかいいようがない。担当したアニメキャラは数知れず。


僕が滝口さんのお声を滝口さんとして最初に認識したのはNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」(1964年放映開始)のライオン君だったと思う。外画では言葉は悪いが「デブ専」で、恰幅がよくコメディセンスのある役にはよく抜擢された。とくにゲルト・フレーベなどは絶品だった。

残念ながら直接お話をうかがう機会はなかったが、ベテラン諸氏へのインタビューで必ず名前が挙がるのが滝口氏だった。本番収録中、真顔で台本やリハ時にはないアドリブのギャグをあのお声で飛ばすので、吹いてしまう被害者続出。当時はリールの途中でNGを出すとまた最初から録音し直すはめになるので大迷惑である。しかし、なにせ大ベテランの悪戯なので出演者一同は文句も言えなかったという(反面、若手のアドリブには厳しかったとも)。お人柄が偲ばれるエピソードである。

ご冥福をお祈りいたします。


※63年に再放送されたときはハイデンを大平透、クーガンを藤岡琢也が担当した。

第4回ギャグ漫画家大喜利バトル

8/26、第4回ギャグ漫画家大喜利バトル@なかのZERO小ホール。



今年は出ないので本当に気が楽だ(過去2回は前夜に既にえずいてた)。それにしてもこのキャパの客席が満員御礼になるようなビッグイベントになったのだなあ、と感慨ひとしお。おおひなたごうの頑張りには頭が下がる。




今回エントリーしたのは、おおひなたごう、カラスヤサトシ、西原理恵子、島本和彦、しりあがり寿、ダ・ヴィンチ・恐山、東村アキコ、村上たかし、そしてディフェンディングチャンピオンの和田ラヂヲ。加えてスペシャルマッチは世界の浦沢直樹と寺田克也、司会が千葉山貴公、審査員が、手塚るみ子、奥村勝彦
コミックビーム編集長、吉田豪という豪華メンバー。



今回も皆ハイレベルな戦いで、気が楽だとかいってたら観ているだけで胃が痛くなった。そして優勝は(マンガ家としては)デビュー一週間たらずの謎の覆面つぶやき職人・ダ・ヴィンチ・恐山氏という意外な結果に。でも、これで観ている人には本当にガチンコ勝負だということが伝わったと思う。恐山氏の解答は本当に面白かった。




ウチアゲでは、以上のメンバーに加え、過去の出場者や友人マンガ家・編集者らが一同に会し、大マンガ家宴会の様相に。店が火事にでもなってみんな焼け死んだら、確実に雑誌が2,3誌つぶれそうな業界密度だった。出版社の枠を飛び越えた作家どうしの交流はふだんはなかなか機会がないので、僕も色んな方と話が出来て楽しゅうございました。ちなみにスタート時の我がテーブルは寺田克也、西原理恵子、羽海野チカ、よしながふみ、吉田豪(あとから東村アキコ、八巻さん@小学館も)というメンツ。なのに話題はなぜか某スタッフの男女関係に終始……。




2011年8月31日水曜日

奥様お尻をどうぞ/クレイジーハニー/超コンデンス

今月はお芝居もたくさん観に行きました。



まず下北沢本多劇場で『奥様お尻をどうぞ』。全編くだらないにもほどがあるギャグのオンパレード。その密度がすごい。詰め込めるだけ詰め込んだという感じ。そしてくだらないながらも2011年の夏に演じられる意味はブラックかつ不謹慎にしっかりと押さえてある。もう大好き。心底こんなマンガをこそ描きたい、と羨望。楽屋でご挨拶したKERAさんにギャグ密度のすごさに圧倒された旨を伝えると「途中でインフレ化して客も疲れてくるの判ってるんだけど、それでも詰め込まざるを得なかった。詰め込みたいから」と。関西方面の人は大阪公演、観に行くといいよ。



関係ないが、終演後寄ったお店で豊崎社長とお遇いしご挨拶する。豊崎さんも『奥尻』観劇の後だった。



次にPARCO劇場で劇団、本谷有希子『クレイジーハニー』を吉田戦車、山本直樹とともに観劇。3人ともけっこう初期から本谷さんの芝居は見ているのです。今回もじとじとと傷つけ合いつつ依存しあっている嫌な人間関係を突いてくる。長澤まさみのナマ足が眼福。吉本菜穂子、安藤玉恵は物語を相対化客観化させるいつもの役どころで安心感(二人とももっと活躍させてほしかった)。驚いたのはゲイ役のリリー・フランキーさんで、ロフトプラスワン的な店で語る冒頭のシーンでは最初リリーさんとわからなかったほど。だが何か既視感が…と思ったら、そうだ、既成のゲイタレントというよりどこか吉田豪さんっぽかったのだった。あっ吉本さんがUPした我々との写真がここに。



そして下北沢ザ・スズナリで少年王者舘『超コンデンス』。おなじみのパズルのような言葉遊びとともに進行する、これまたしばしば登場するモチーフである異体の自分と時空を彷徨う物語。具体的言及はないが、登場人物は全員もしかして死人? と思わせる雰囲気がいつも以上に色濃く漂っているように感じたが、それは今年ゆえのこちらの勝手な思い込みか。今回も繰り返される夕刻の斜光と蜩のSE。観た時期もあって「ああ今年も夏が終わった」と懐かしくも寂しい気持ちになってしまいましたよ。それにしても中村榮美子さんはかっこいいなあ。



帰りに天野天街さんに、ある打診を受けました。ふむふむ楽しみ。



とりったーTシャツ



営業でございます。『とりったー』の中で僕が着ているTシャツですが、TEE PARTYさんで販売中です。白黒2種。

小松左京、宇宙に逝く



8/17には新宿2丁目「GEISHA」で行われた小松左京追悼トークショー「巨星、宇宙に逝く」(出演:山田正紀・横田順彌・鏡明・高橋良平、司会:大森望)を客として観に行く……はずだったのだが、大森さんの策略でいきなり前半のパネラーとして登壇するハメに。ちなみに『小松左京/宇宙(そら)に逝く』というのは78年にビクターから発売されたオリジナル書き下ろしのドラマを収録したレコードのタイトル。



トークショーはここでUstream中継されたが、まだ視られるのかな? あと、まとめのtogetterはここ



前半は『さよならジュピター』の裏話と「最高傑作は『エスパイ』」という、SF関係者らしいどこまでマジなのかシャレなのかわからない結論で終了したが、後半、僕が抜けてからの各氏の発言は、なかなか聴くべき所が多かった。高橋良平さん「小松さんが物識りとは思わない。少ない資料からジャンプできる妄想力こそがすごかった」。鏡明さん「長編作家と思われており、また短編こそがいいというファンも多いが、本当に出来がいいのは中編」という指摘は、重要、かつ、してやられた感じ。ただ、この二つとも「小松左京は博識の長編作家」という共通イメージがあってこそのカウンタ意見なので、その前提がそもそも若い読者に共有されてるかどうか。



というわけで、今月発売の「映画秘宝」10月号に、柳下毅一郎さん、青井邦夫さんんとともに追悼文を書いています。SFファンのみならず読書人のコンセンサスだった巨大な教養人としての小松左京のイメージが少しでも伝わっていればいいのだが。

アトムの足音が聞こえる

8/14、オーディトリウム渋谷で『アトムの足音が聞こえる』を再見。国産TVアニメ第一号の『鉄腕アトム』、先にマンガのほうのアトムファンだった僕は、正直ほとんど動かないこのアニメにリアルタイムでがっかりしたものだったが(生意気ですね。開始時は幼稚園児なのに)しかし、そのぎこちない動きをカバーしていたのが声優陣の演技と独特の効果音だった。なによりもこのドキュメンタリーのタイトルにもなっている「キュッピョッ」という足音が有名だが、僕がいちばん好きだったのは、巨大な金属物体が出現するときに鳴る低い「ギョゴン」という音だった。現実の音を模したSEというよりは、圧倒的質量を表現する一種観念的な雰囲気音なのだ。



これらの音を作ったのが、この作品の主人公大野松雄氏である。ドキュメンタリー前半では映画・アニメ界の錚々たる音響スタッフが氏の仕事を語るが本人は登場しない(このへん、やはり電子音楽家のドキュメンタリーとして秀逸だった『テルミン』をちょっと彷彿させる)。大野氏は、僕も映画を観るまでは詳しく把握していなかったが、単なる効果マンの枠を超えた人物で、後半ではそういう氏の、人から見れば偏屈な生きかたや、現在の養護施設での活動を描いていく。映画・アニメ・テレビの音声制作、電子音楽に興味のある人は必見。7月に急逝されたレイ・ハラカミさんも登場。



この日は終映後、労作『電子音楽 in JAPAN』の著者・田中雄二さんと樋口真嗣監督のトークショーがあり、インサイダーならではの裏話が興味深かった。優れたドキュメンタリーは(悪い意味でなく)優れたフィクションなのだなあ、と思ったことです。

ライヴ二題

楽しいライヴ二つに行きました。


8/7は下北沢「風知空知」で伊藤銀次さんと黒沢秀樹さんのuncle-Jam。ギターと歌の巧い人がやるエヴァリー・ブラザーズは綺麗だなあ。我々がやるとあのねのねみたいになっちゃうからなあ。いや、あのねのねも好きでしたけれどもね。


そして8/10は代官山「晴れたら空に豆まいて」で、日比谷カタン柴草玲、grapple、玲里トリオのイベント。grappleと玲里トリオの皆さんは以前からよく知っているのだが、この日初めて観た日比谷カタンさん(浴衣で登場)と柴草玲さんのパフォーマンスには驚き呆れ嬉しくなった。すごくいいもん観た感。

藤子・F・不二雄大全集「少年SF短編3」

藤子・F・不二雄大全集の新刊「少年SF短編3」 の解説を書きました。マンガの短編と長編の違いとは? というような話をしています。また月報にもちょこっと顔出しで登場しています。



しかし藤子さんのマンガの解説を書くことになるとはなあ。
小学生の俺に聞かせたいよ。

2011年8月1日月曜日

とりったー発売中



COMICリュウで連載していた『とりったー』が7/30付けで発売になりました。



『とりったー』は大雑把に行って2本の柱で構成されています。



ひとつはTwitterでお題を出し体験談を募集、返ってきたリプライを僕がマンガ化する、という投稿企画。もうひとつはTwitter上の(正確には僕のタイムライン上で起きている)さまざまな出来事について僕が出向いていってマンガ化するという個人的なレポート企画。


とり・みきのTwitterアカウントは @videobird ですが、投稿の募集は @toritter_post で行っています。



詳しくは連載開始時のこの日記をお読みください。もちろんTwitterをやっていない人にも面白く読んでもらえるよう企業努力して描いていますので、やや偏った
Twitter入門書にも、もしかしたらなるかもしれません。ならないかもしれません。


目次から内容の一部を紹介しておきます。


●Twitter

●妖怪のっぴょっぴょ

●フーターズ

●都条例

●東日本大震災

●イタイ話




巻末にはロングインタビューを掲載。とり・みきがTwitterについてあれこれ知った風なことを語っています。



関連リンク

COMICリュウ


2011年7月31日日曜日

小松左京さん

Twitterでもこのようにつぶやいた。

もうちょっと経ったら色々楽しかった想い出、怖かった想い出を書こう。たくさんありがとうございました。

タツローくん 2011 EDITION

山下達郎オフィシャルファンクラブ会報「TATSURO MANIA」に連載している4コママンガ『タツローくん』の単行本が「2011年EDITION版」としてリニューアル発売されました。

旧版は新書サイズでしたが今回はほぼ正方形。旧版収録以降の回はもちろん、ツアープログラムに掲載されたマンガや、山野楽器のフリーペーパーに短期連載された「まりやちゃん」も収録。ただし購入は、いまのところファンクラブ会員限定の通販のみ。解説は山下達郎さんご本人です。

ごらく亭とハナシをノベル

今月はちょっと変わった落語の会二つに足を運んだ。


ひとつ目は7月2日北沢タウンホールで行われた「ごらく亭のお中元」明大落研先輩の小宮孝泰さん主催の落語会で、ごらんの通り出演者は全員本職の落語家さんではない。


少し前に「黒い十人の女」を観たばかりのナイロン100℃ 松永玲子(藤乃家心斎橋)さんの高座は初めて拝見。松永さんも京都女子大の落研出身と知る。ナイロンの台本の遅さを嘆くマクラがおかしかった。



トリの松尾貴史さんの落語が玄人はだしなのは知っていたが、この夜の「はてなの茶碗」にも唸る。その前の出演者全員の寸劇では時事ネタのアドリブ頻発だったが、落語のほうはうってかわって安易なくすぐりを排除した正統派。そこに米朝一門とも立川流とも縁の深い松尾さんの真摯な落語愛を感じた。もっとも一箇所だけさすがのモノマネ芸が登場するのだが、これは書かないでおこう。


しかし幾つになっても落研の先輩と会うと緊張してしまう。僕が所属していた当時は明治の落研しか知らなかったので、先輩方の高座を当たり前のように眺めていたが、その後、別の複数の大学の落研の人の高座を見る機会があり、あらためてウチのレベルの高さを知った。だてにプロをたくさん輩出してるわけではない。


なんてOB風なことを書いているが、僕は明大落研からは早々にドロップアウトして在学中にマンガ家になったので、OBを名乗るのは本当はおこがましいのである。先年、先輩方からはそう名乗ってもよいというお許しをいただいたが、なにせ落研というのは上下関係が厳しく、今でも小宮さんの前に出ると、密かにタバコに火をつけるためのマッチやライターを準備したりするのだ(今現在、小宮さんが喫煙されてるかどうかはともかく)。ウチアゲでも三十数年ぶりにお会いする一年上の先輩がいらして、思わず正座でお酒をお注ぎしたり。



ウチアゲ終了後いつものバーに寄ったら、偶然大林組(映画のほうの)ご一行様がいて監督と熱く抱擁。まもなく新潟県で新作のロケ開始とのこと。



さて、その明大落研落語会が秋にあります。すごいメンツ。


もうひとつの落語会は7月17日にお江戸日本橋亭で行われた「お江戸deハナシをノベル」


「ハナシをノベル」とは月亭八天師による新作落語の会で、オリジナルのネタを書いているのはSF界・ミステリ界の錚々たる作家さん達。ネタおろしの会は定期的に大阪で開かれているのだが、これは年に一度の東京での出張版。


この日は、北野勇作『寄席の怪談』、田中啓文『残月の譜』、浅暮三文『ぴゅうするる』の三題。お江戸の会はネタ下ろしではなく再演なので演出も練られているようだ。いずれもいかにもそれぞれの作者らしい噺で面白かったのだが、いちばん感心したのは、全然違う方向性の三つの噺をそれぞれに合ったベストの演り方で演じる八天さんの懐の深さ。『残月の譜』では横笛まで披露。しかしまさかあの曲が奏でられるとは……。


幕間に作家の人達が出てきてグダグダな話をするのがこの会のもうひとつの楽しみ。しかし今回も本当にまったくもってグダグダしていた。


終了後は直帰のつもりだったが、帰路、中川いさみから電話。さる女の子バンドのライヴのウチアゲ中だという(どういうことだ)。行くとなんだか美女率が高い。一人が誕生日間近なので何か一曲ということになり、その場にあったギターを僕が弾いて中川が『帰れない二人』を歌う。いきなりにしてはまあまあだった。


星雲賞

先の日記『NOVA3』所収の「SF大将特別編 万物理論[完全版]」が星雲賞コミック部門にノミネートされたことをお伝えし、日本SF界の先行きを案じましたが、受賞作は荒川弘さんの『鋼の錬金術師』に決定しました。よかったよかった。

ノンフィクション部門では僕がカバーとカットを担当した鹿野司さんの『サはサイエンスのサ』が受賞しました。おめでとうございます。世の中は原発問題で揺れているけれど、エネルギー政策を考える際の重要な指摘が幾つかこの本でもなされています。未読の方はこの機会にぜひ。

小林修さん

声優の小林修さんの訃報に接す。7月に入ってからの発表だったが6月28日に亡くなられていたとのこと。

小林さんのブレイクは2006年にもNHK-BSで放送されていた『ローハイド』(NET=現テレビ朝日1959〜1965年)のフェイバー隊長(エリック・フレミング)役。部下のロディ(クリント・イーストウッド)の山田康雄さんのほうが実は年上だった。


この役のイメージで『荒野の七人』のユル・ブリンナー、アニメでは『宇宙戦艦ヤマト』のドメル将軍など「責任感あるリーダー役」が多く振られたけど、『アメリカン・ヒーロー』(日テレ1982年)のビル捜査官(ロバート・カルプ)以降はコミカルな「無責任な上司」役も増え、これも独特のあたふた芝居が本当に巧かった。長尺物ではなんといっても先述のユル・ブリンナーのフィックスとしておなじみ。我々の世代にはブリンナーは小林修の声で記憶されている。

昨年直接お話をうかがったときのブログはこちら。 そのインタビュー音源はこちら。謹んでご冥福をお祈りいたします。

玲里ライヴ


6/27は下北沢モナレコードへ玲里のライヴを観に行ってきましたよ。この日はプロデューサー&レコーディング・スタッフの難波弘之さんも急遽(なのかな?)参加。

玲里の声は透明感があって、でもどこか切なげなのがよいですね。終了後、いきなり似顔絵付きサインを頼まれたのだけれど、下描きナシで似顔というのは本当に怖いんですよ。失敗したときのために出来れば描き直し可の紙に描きたいのだが、色紙とかグッズにするとなるとよけい。

というわけでこんな感じになりましたが似てるかな……。

2011年6月24日金曜日

カキューン!! 新動画

昨年から関西テレビの深夜バラエティ『カキューン!!』でアイキャッチに使われる超ショート動画をそうまあきらさんと一緒に担当しているのですが、新ヴァージョン4本がオフィシャルサイト(→ここ)でも観られるようになりました。声は藤本景子アナ。

近々新作も追加されるという話もあるよ。関西地区の皆さんは木曜深夜『カキューン!!』をよろしく。

2011年6月20日月曜日

とりったー(ひとまず)最終回

COMICリュウ8月号が発売されました。


オフィシャルサイトのインフォメーション通り、COMICリュウはこの号で一旦休刊、年内リニューアルされることになりました。『とりったー』は今回でちょうど単行本一冊分。ひとまずの区切りとして暫定の最終回とします。


このあと『とりったー』を続けるのか、続けるならどういう形がいいのかは只今検討中。これまでweb+雑誌という変則的な連載企画でしたが、レスポンスのタイムラグや時代的な必然を考えるとすべてwebでやってもいいかなとも。投稿いただいた数時間後にはその内容を短いページのマンガにしてweb上にUP、みたいな。


……というのは案のひとつであってまだ決定したわけではありません。別の新作がスタートすれば、しばらくはそちらのほうに軸足を置かねばならない。マンガ家はやはり旧作よりはリアルタイムに描く物のほうに力を入れないといけないので。とはいえ、せっかく動き出した仕掛けというか「場」なので、なんらかの形で続けられればいいなとは思っているのです。


この手の投稿&ルポマンガは不確定要素が多いので、だいたいいつも試行錯誤の連続になります。とくに連載開始後、都条例問題や震災という大きな出来事があって、投稿の紹介の合間に右往左往する様がそのままマンガに描かれています。政治的主張や行動、はたまたプロパガンダなどではなく、ほんとうにただみっともなく翻弄され、ときにはどうしていいかわからず茫然としている。いっぽうでこれまでの自分のスタンスは変えたくなく、こんなときこそ不謹慎でくだらない話題を続けていこうとも思っている。作品としてはバラバラで収まりの悪いものになっているかもしれませんが、それが正直な(僕の)この1年だったといえるでしょう。


Twitterで投稿いただいた方、つぶやきを引用させていただいた方、そしてこの変なマンガの読者の方すべてに感謝致します。どうもありがとうございました。Toritter shall be back!!


なお単行本は当初の予定通り7/30に徳間書店より発売されます。

※リンク先はAmazon

2011年6月19日日曜日

クレープ焼酎

球磨焼酎の卸問屋をやっている従兄弟の店で『クレープを二度食えば』のカバーイラストをプリントした焼酎を作ってもらいました。といっても商品ではないのでお買い上げは出来ません。まだ試作品だがイベントでのプレゼントとか賞品とかに使おうかな、と。

表題作と焼酎はなんか不釣り合いに思えるかもしれないが、この短編集には自分の郷里である球磨焼酎の産地・人吉を舞台にした作品が3編収録されているので、まるで無関係でもないのです。

2011年6月14日火曜日

熊本の日々

さて5月の後半は熊本に帰っていたのである。というと、すわ放射能疎開かと早とちりする人もいるかもしれないが、全然そんなことはない。ちょとプライベートな用事がありまして。

今回久々に半月近く滞在してみて、いやあ、あちこち変わりましたね。もっとも用事に追われてゆっくり散策というわけにはいかなかったのだが、最初の一週間は日に一度、下通り近くのネカフェに通っていたので、その道がてら。イラストや単行本の仕事はノートパソコンで実家でもやっていたけど、インターネット回線が引かれてないので、仕事の連絡やデータ送りのため、やむなく(でもあまりに効率悪いのと、どこでどうしたものかネカフェ利用後スパムが増えたので、次の一週間はたまらずWiFiルータを買った)。

僕が高校〜大学の頃は熊本は全国的にも垢抜けない街として有名だった。ラジオのネタで「日本一美人が少ない街」として取りあげられたこともある。しかしその後やたら女性タレントを輩出し、アパレルメーカーのアンテナショップなども出来たりして、いまやそのイメージは払拭どころか逆転した。

で、実際、夕方以降の下通りあたりを歩いていると女の子が「可愛い」というよりは、なんか「エロい」のだ。渋谷なんかよりも全然。ギャル会みたいなグループもたくさんたむろしてて、これはこれでなんか妙な風に純化というか特化してるなあ、と思ったことだった。あと、何処へ行ってもくまモンだらけだ。小山薫堂恐るべし。

そういうわけで、用事と仕事でラーメンも馬刺しも太平燕もいきなり団子も食さない日々であったが(熊本人が四六時中それらを食べているというのは幻想です)、5/21は実家から徒歩圏内の水前寺競技場へロアッソ熊本とジェフ千葉のデーゲームを観に行った。今季の熊本は割と調子いいのだが千葉は名門で首位。しかもFWに話題の進撃の巨人を擁し、そう簡単に対処出来る相手でははない。

と思っていたら、この日の熊本は30度を超す暑さ。その地の利?を活かせたのか、先取されながらも追いついて1-1のドロー。試合全体としてもけっして守り一方でなくかなり長い時間帯で攻め込んでいて、観ていて面白かった。行ったかいがありました。しかしここでも馬や猿に混じってくまモンが。それはしかたないとして、つきそいのお姉さん千葉戦で黄色いハッピはよせ。

滞在も終わり近くの5/29、夜遅くTwitterを見ていたら「とり先生、今熊本に天野天街さんが来てますよー」とのmentionが。それから繁華街をモバりつつ移動し2時間後には銀座通り近くの居酒屋で天野さんと飲んでいた。テクノロジー万歳。天野さんはこの公演のために来熊なさっていたのだった。知ったのが楽日の夜で残念。でも楽しい夜でした。

最後の写真は地元スーパーで買った九州限定発売の日清の新幹線開通記念カップ麺。久留米だけゲット出来ず。

2011年6月9日木曜日

SF大将特別編 万物理論[完全版]無料公開中

『NOVA3』所収の「SF大将特別編 万物理論[完全版]」がおかげさまで星雲賞コミック部門の参考候補になりました。ありがたいけど、こんなことで日本のSFは本当に大丈夫なのか。

これを記念して6/12までの期間限定で本作品全8ページを無料公開しています→ここ。未読の方はこの機会にぜひ。

2011年6月1日水曜日

震災と放射線のあれこれ

5月14日にはNakedLOFTで行われた「震災と放射線のあれこれ」というトークライヴへ。出演は野尻美保子さん、松浦晋也さん、大貫剛さん、八谷和彦さん。


野尻さんとはTwitterでは(震災以前から)お話ししているのだが、実際にお目にかかるのは初めて。政府の指定や発表よりもだいぶ早く気象や地形によっては30km圏外でも警戒が必要な地域があることを指摘するいっぽうで、根拠の怪しい放射能デマについては反証したりと、僕の中での(←偉そう)信頼度は高い。でも僕が野尻さんと絡むのはマンガとか音楽とかダジャレとかもっぱら科学以外の話題ですが。この日のプレゼンも『わたしは真吾』やパトレイバーの話が引用されてて面白かった。ときどき入る八谷さんの噛み砕いたフォローがまたとても絶妙でわかりやすい。さすが放射能をうんちでたとえた人だ。


その八谷さんは自作の放射線測定器を持ってきていたが、しまった、撮り忘れた。写真はお客さんの一人が持参した測定器。これはかなり本格的な物。


僕がガイガーカウンターという機械の存在を知ったのは『モスラ対ゴジラ』(1964年)という東宝怪獣映画だった。あのガリガリというSEがやけに印象に残った。それから半世紀近く経ってまさかあちこちで一般の人が測り出す世の中になるとはなあ。

シンプソンズとuncle-jam

エントリーは既に6月になってしまっているが、まだまだ5月8日の話。思えば5月前半はイベント続きだったのだ。


この日のお昼は新代田の駅前のライヴスペースで行われたシンプソンズファン感謝祭に行ってきました。シンプソンズ・ファンクラブ有志による完全なボランティアイベントで、会場に着いたら古くからの知り合いのF君が受付をやってて驚いたり再会を喜んだり。


出演者はホーマー役の大平透さんを筆頭に、おなじみのレギュラー陣の皆さんが勢揃い。マーサ役の一城みゆ希さんだけお仕事のつごうでちょっと遅れるも無事途中から参加。


それにしても驚いたのは、ファンクラブの皆さんが制作したというオリジナルのシンプソンズ・ストーリー(一家が日本を訪問するという話)。アニメというよりは電気紙芝居的な作りだが、これが絵もギャグもストーリーも台詞も大変よくできていて感心することしばし。この投影に合わせてレギュラー陣が台詞をナマでアテるという贅沢な趣向。


チャリティコーナーでは及ばずながら声優さんの似顔を描いた色紙を提供。いずれもたいへんありがたいお値段でご購入いただきました。全体として声優陣もファンも、まさに相互に「感謝」しあっているのがよく伝わるすてきなイベントだった。時節柄風当たりの強いご職業のご一家ではあるが、原発ギャグを心から笑える空気に早くなればいいと思います。原発は爆発だ!


夕方からは伊藤銀次さんと黒沢秀樹さんのuncle-jamのLIVEを観に下北沢の風知空知へ。途中でアコギ二本で即興で曲を作っていくコーナーがあって、こういうのをナマで観ると自分のギター熱も再燃。お二人はプロですから素人が「刺激を受けた」なんて書くのは失礼千万というかおこがましい話ですが(そもそも僕は銀次さんのエレキギターの教則本を買ったことがあるのです)それでもいろんなことが参考になりました。あれのほんのちょっとでも真似できればなあ。


終了後、銀次さん黒沢さん、それに会場にいらしてた杉真理さんと歓談。音楽的引用とパクリの線引きについて色々と。たいへん有意義なお話が次から次に出て、こちらは本業のほうに刺激を受ける。なぜならそれはマンガにもそのまま当てはめることの出来る話だから。しかしナイアガラーには歓喜の夜となりました。

時をかけた少女

5月7日はヒューマントラストシネマ有楽町で行われていた《大林宣彦のいつか見た映画館と》というシリーズイベントの『時をかける少女』の回へ。


ビデオによる監督の映画解説があり、久しぶりの劇場のスクリーンでの『時かけ』鑑賞。そして上映後は原田知世さんと大林監督のトークショー。と書くと、よくある出演者イベントのように思えてしまうかもしれないが、両者のフォロワーにとっては、この夜の対談は特別な意味と感慨があった。


監督も話されていたが、ややカルト的な作品となってしまった『時かけ』という初主演映画(そして歌)は、その後の知世ちゃんにとってはずっと重荷だったかもしれないのだ(知世ちゃん本人の言でなく、とり・みきの考えを述べています。要注意)。ファンはいつまでも芳山和子のイメージを原田知世に重ねようとする。それはけっして心地よいことばかりではなかったはずだ。おそらくある時期の原田知世にとっては「脱・時かけ」こそが命題だったろう。


ただ、女優やアイドルが自我を過剰に前面に出し始めると、過去のファンが離れていくケースも多い。これとは反対に役に殉じ銀幕の伝説として私を隠していく俳優もいる。ところが希有なことに、原田知世は過去のイメージやファンの想いを裏切ることはなく、かつ、お仕着せでなくしっかりと自分を主張するミュージシャンとして奇跡的な再生を果たす。


この再生の成功に関しては、本人の意志はもちろんだが鈴木慶一氏の存在が大きかったことはファンならご存じの通り。いま現在日本の芸能界においては彼女のようなスタンスで活動している女優/ミュージシャンは、ほとんど唯一無二の存在といってよいのではないかと思う。


しかし、それでも原田知世がアルバムで、そして人前で「時かけ」を歌うのには、ある程度の年数を要した。2008年3月1日、その封印は解かれる。恵比寿ガーデンホールにおけるWhat' me worry? コンサートで、多彩なゲストとのデュオを経て彼女がアンコールで最後に歌った曲は「時をかける少女」のボサノバ・バージョン。会場で聴いて体が震えたのを覚えている(このバージョンはアルバム「music & me」に収録)。


「時かけ」の歌は復活した。では映画は? アニメ版にも実写版の新作にも彼女の名前はなかった。大林版『時をかける少女』のファンにとっては、どこかでほっとする反面、少々残念な気持ちにもなった、というのが本音だろう。そして「もしかしてもうこのまま両者に接点はないのだろうか」という不安も。多くの支持者やファンがいるにもかかわらず、デビュー作に触れたがらない役者さんは実はけっこう多いことを我々は知っている。


そこへこのイベントの報が飛び込んできた。この夜、彼女は僕らの前で監督と再会を果たし、話をしてくれた。それだけでもうじゅうぶんだった。「『時かけ』は歌も映画も大切な作品でありすぎて簡単には関わることが出来なかった」と彼女はいった。さらには監督のオファーに対して、確約ではないが作品参加の可能性にも言及してくれた。大林版『時かけ』のファンにも、ずっと原田知世のファロワーであり続けた人間にも、なによりその両方だった僕のような者にとっては、とても幸せな夜だった。知世ちゃんありがとう。

写真は知世ちゃんと監督ご夫妻(撮影:大林千茱萸)


さて、この夜はサプライズゲストで相手役の高柳良一さんも登場。監督を驚かせるために知世ちゃんが密かに呼んでいたのだった。今はニッポン放送の重役さんになっている高柳君とはなんだかんだで一年に一回はお会いしているのだが、しかしこのコンビ、例えは悪いが化け物みたいに歳取ってないのだ。永遠に時をかける時の亡者になってしまっているのではないか。口の悪いまとめで本当にすみません。