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2011年12月31日土曜日

ゲット スマート実況


12月11日は日曜洋画劇場『ゲット スマート』のオンエアに合わせて、主演のスティーヴ・カレルの声を担当した江原正士さん(写真左)と僕とで吹替に関するツイートコメンタリーを行いました。アン・ハサウェイ担当の田中敦子さん(@atuwosyousa) もご自宅より参加。

まず映画の解説から。これは元々米NBC制作の60年代のTVシリーズのリメイクで、日本でも「それ行けスマート」というタイトルで、66年から67年までNET(現テレビ朝日)68年から69年まで東京12チャンネル(現テレビ東京)で放送されました。

外国TVドラマにもその時々の、たいていは映画のヒットに呼応した流行りがあります。60年代初期までは西部劇が主流でしたし、その後戦争物が流行りました。やがて007シリーズがヒットすると、TVでも「0011ナポレオン・ソロ」を筆頭に「ハニーにおまかせ」「アイ・スパイ」などスパイ物一色になりました(蛇足ですが、70年代は映画『ダーティハリー』とTV「刑事コロンボ」のヒットで刑事物一色になります)。

「それ行けスマート」はそういうスパイ物のパロディとしてメル・ブルックスらが企画したドラマで、スマート役のドン・アダムズの吹替は藤村有弘が、エージェント99は久里千春(のち小原乃梨子)、チーフは塩見竜介、ジーグフリードは川久保潔が担当していました。映画にも登場する靴の電話はTV版の有名な小道具です。

『ゲット スマート』は吹替付きのDVDが出ていますが、今回のOAは「日曜洋画劇場」用に新たに新録されたもの。吹替キャストは

スマート=エージェント86/スティーブ・カレル(江原正士)
エージェント99/アン・ハサウェイ(田中敦子)
エージェント23/ドウェイン・ジョンソン(小杉十郎太)
チーフ/アラン・アーキン(小川真司)
ジーグフリード/テレンス・スタンプ(大木民夫)
大統領/ジェームズ・カーン(内海賢二)
ブルース/マシ・オカ(関智一)
ロイド/ネイト・トレンス(木村昴)
シュターカー/ケン・ダビティアン(宝亀克寿)
ララビー/デヴィッド・ケックナー(塩屋浩三)
演出:鍛治谷功 翻訳:藤澤睦実 制作:東北新社

これだけでも相当に豪華なメンツです。最近はTVの洋画番組でもDVD版をそのまま流すケースが増えているのですが、久々に日曜洋画の心意気を見た気がします。ブルース&ロイドがドラえもんコンビなのはテレ朝らしい面白いキャスティング。さらにカメオ出演のビル・マーレイは安原義人!(実は江原さんもビル・マーレイをたくさんやってらっしゃいますが、安原さんも当番は多い)加えて、短い出演ですが大友龍三郎、大塚芳忠、田中秀幸さんまで登場という、てんこ盛りぶり。

超豪華な吹替メンツだったので、リプライで予算についても幾つか質問を受けました。これは現場の方々は立場上答えづらいと思うので、僕個人の責任で。吹替の音声制作の予算はDVDよりTV版のほうが全然潤沢です。とはいってもあくまで比較の話であり、洋画番組も他の番組同様、この節なかなか厳しい制作環境にはあるのですけど。

僕の考える贅沢な吹替というのは、例えば有名俳優がワンカットだけでもカメオ出演していたとしたら、その可笑しさや効果を吹替版で忠実に再現するためには、声優さんもそれに見合う(出来ればフィックスの)方を起用することだと思うのですね。実際は予算の問題等でなかなかむずかしいのですが、この日のキャスティングには、予算を度外視してなんとかTVオリジナルの吹替を楽しんでもらおう、という制作現場の熱意が現れていました。

もちろんDVDの吹替にも意義はあります。幾つか確認のためDVD版(こちらはスマート=横島亘、99=林真里花、23=楠大典、チーフ=佐々木敏、シーグフリード=山野史人というキャスト)も観てみましたが、吹替台本はかなり原画のセリフに忠実でした。それにもちろんノーカット。劇場版やDVD版はオフィシャルなものとして残るので、そうしたことがまず第一に求められます。反面、お行儀はいいけどあまりお遊びが許されない。

これに比べてTV版は最初からCM中断やカット前提、さらに視聴率も気になりますから、暴論に近い極論をすれば「その映画を使って新しい作品を作る」くらいの感じで演出がなされます。キャラクターはより際だつように、セリフもわかりやすさを優先した翻案が多くなります。例えば今回原画で「チャック・ノリスか」と言っていた部分は、TV吹替ではスティーヴン・セガールになってました。

そういうわけであくまで僕個人の考え方ですが、TVの外画番組は「原画の映画スタッフ+吹替制作スタッフの共同作品」という気持ちで観ています。といっても原画のいちばんキモの部分を損なってはいけません。原画に風格があれば吹替版もそうあるべきでしょう。いっぽう原画がお遊びの多い映画だったら吹替もたくさん遊んでかまわない、と思っています。ただしセンスは問われる。コメディは大真面目に演じてこそ可笑しいので、勘違いの方向にふざけすぎると逆効果になることも多い。今回はなかなかバランスがよかったのではないでしょうか。

楽しかったけど、しかし、リアルタイムの臨機応変なツイートはデータ的なことを間違わないか緊張するね(ただでさえよく間違うのに)。江原さん、田中さん、そしてふきカエル @fukikaeru の中の方々、どうもお世話になりました。

そういえば原画にも有名スパイ映画のパロディシーンが幾つか出てきますが、今回の吹替メンツ、なんと過去にボンド役を演じた人が、内海賢二、小杉十郎太、小川真司、大塚芳忠、田中秀幸、江原正士と6人もいました。……という話をしていたら、翌日の田中敦子さんのツイートで「あつをも007消されたライセンスのボンドガールよ(#^.^#) 」というご指摘が。そうだった(ヤマちゃん版で)! 不覚!

『ゲット スマート』アテレコの現場レポート↓

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