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2021年9月16日木曜日

マルメロ

熊本県宇土(うと)市の小学校で「マルメロ栽培復活に挑戦」というネットニュース記事を見た。

『プリニウス』では第11巻75話「リウィア」に、このマルメロを登場させていたので、思わぬシンクロニシティに興味を引いた。マルメロは中央アジア原産だが、BC6世紀頃にはギリシア、BC2世紀頃にはローマに既に伝わっていたといわれている。

プリニウスはこの果実に並々ならぬこだわりがあるようで『博物誌』でもどの品種が生食可能かなど、やたらたくさん記述を残している。そのマルメロをうまくエピソードに使ったのはヤマザキさんのアイデアである。

さて、面白いのは、マルメロはやがてイベリア半島でも栽培され(マルメロはポルトガル語)中国経由で日本の長崎にも伝わり、ここから移植されて江戸前期には熊本=肥後の有明海沿岸で多く栽培されるようになる。その果肉を使って「かせいた」という献上菓子にもなるのだが、1792年の雲仙岳爆発にともなう山体崩壊による熊本側への津波被害、いわゆる「島原大変肥後迷惑」で肥後のマルメロ畑は壊滅してしまうのだ。この辺の経緯もプリニウスと因縁めいていて面白いと思ったのだった。

「かせいた」はその後カリンを使って作られるようになり、今も肥後銘菓の一つになっている。

2021年9月9日木曜日

飯田橋

神楽坂から神保町まで歩く途中に、ちょっと懐かしくなって通称がきデカビルの前を通る。

連載をもらったのは早かったが『るんるんカンパニー』の頃までは描き上げたらそのまま徹夜明けで自分で飯田橋まで出向いていって原稿を渡さなければいけなかった。担当さんは一応いたけど手塚番兼任で週5〜6日は手塚プロに泊まり込みで原稿待ちしていたので。

白いタイルは当時は大理石貼り(儲かったのですね)だったが、2000年頃に耐震問題が起きたとかで貼り替えたのだという。組合が強かったのか自分で運んでいた頃はよくストをやっていて、ガラスはアジビラだらけ、せっかく飯田橋まで来たのに「いま会社でうちあわせできないから」といわれたことも度々あった。

チャンピオンのやめ方が自分の若気の至りもあってスマートではなかったので、四半世紀くらい出禁(とこちらは受けとっていた)だったが、その後アニバーサリー企画の原稿依頼があり、読み切りマンガを本誌に載せてもらった。編集部員もすっかり新世代になったということだろう。そこからももう干支が一回りしてしまったが。

2021年9月7日火曜日

プリニウス第78話「ラス・メドゥラス」

「新潮」10月号発売されました。ヤマザキマリ+とり・みき『プリニウス』は第78話「ラス・メドゥラス」。最終巻最初のエピソードになります。

短い在任の権力争いが終わっていまはウェスパシアヌスが皇帝に。トイレにも税をかけるなど財政再建に懸命ですがそのいっぽうで巨大闘技場を建設中。

それがネロの黄金宮の人工池の跡地に建てたコロシウムで、現在もローマを代表する観光名所となっています。同じくかつて黄金宮に立っていた金ピカのネロ像はヘリウス像に流用され(バラゴンか)この脇にしばらく立っていました。コロシウム(コロッセオ)という俗称も巨像=コロッススからきているという説が有力です。

いっぽうプリニウスはヒスパニア・タラコネンシス総督としてタイトルにあるラス・メドゥラス金山に来ています。ローマはここで人工的な土砂崩れを起こし金の採掘を行いました。

ヤングプリニウス編を挟んで、ヤマザキさんがプリニウス、エウクレスともうまい具合に第1話に繋がる感じで老けさせてくれています。

2021年9月4日土曜日

『諸星大二郎デビュー50周年記念トリビュート』発売

『諸星大二郎デビュー50周年記念 トリビュート』本日発売です。

萩尾望都 山岸凉子 星野之宣 高橋留美子 江口寿史 浦沢直樹 高橋葉介 藤田和日郎 山田章博 伊藤潤二 寺田克也 古屋兎丸 近藤ようこ とり・みき 唐沢なをき 平野耕太 ヒグチユウコ 諸星大二郎(以上描き下ろし)吾妻ひでお(再録)

諸星作品のカバー的なアプローチで描かれた方、読書体験をエッセイマンガ的に描かれた方、様々ですが、今回私は後者で......。そのうち時間的余裕ができれば短編のカバーとか挑みたいところですが、その前に大きな意味でのトリビュートである『石神』が未完だしね。

カバーを外すと本体の表紙には諸星さん描く参加作家のキャラクターが(画像は上げませんのでお買い求めの上ご覧ください)。タキタさんを描いてもらって至福です。原稿料いらない。もらうけど。