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2021年2月26日金曜日

森山周一郎さんと瑳川哲朗さん

森山周一郎さんの訃報が流れた後のSNSを眺めると、やはり多くの人にとっては「刑事コジャック」『紅の豚』のイメージが強いようだ。代表作として異存は無いが、自分のような古くからの洋画劇場ファンにとっては、森山周一郎といえばまず何を置いてもジャン・ギャバンであった。

「日曜洋画劇場」が始まる以前の1965年にNET(現テレ朝)がギャバン主演の映画を『ジャン・ギャバン・シリーズ』として流したことがあり、そのときからのほぼフィックス。当時の森山さんはまだ二十台後半だった。独特のしゃがれた低音は「小2の時からこの声なんですよ」と、とりにはおっしゃっていたが、これはシャレだったかもしれない。

銀髪男優のイメージがついたのか、その後はスペンサー・トレーシーも担当、フランス映画ではリノ・ヴァンチュラも持ち役だったが共演作では格上のギャバンを担当した。

前音声連のポスター用にとりが描いた森山さんの似顔絵
各局で長尺物と呼ばれる洋画番組が増えてくると、TBS「月曜ロードショー」で「日曜」では大塚周夫氏担当だったブロンソンに抜擢(『レッド・サン』から)される。同様にTBS「刑事コジャック」で、それまで「日曜」では大平透氏のフィックスだったテリー・サヴァラスを担当することになり、自身も髪の毛を剃ってキャンペーンに一役かった。変わった所では『グラン・プリ』の三船敏郎は森山さんがアテている。

「コジャック」は「コロンボ」の高評価を受けてか同じ額田やえ子さんが翻訳を担当した。部下や上司がほとんど出てこないコロンボと対称的に署内でのかけあいが魅力で、額田さんは江戸のべらんめえ調でキャラクターを強調した。著書『アテレコあれこれ』では同じ英文のセリフでもコジャックではこう、コロンボではこう訳すという比較が載っていて面白い。例:You gotta be kidding「なめるんじゃねえよ(コジャック)」「ホントですか、それ(コロンボ)」

映画のサヴァラスは(味方であっても)ちょっと性格破綻気味なキャラが多く、これは大平さんがとても合っていたが、テレビのコジャックは森山さんで正解だったと思う。

月末には、こちらもベテラン・瑳川哲朗さんの訃報も飛び込んできた。

森山さんと共通するのは、お二人とも晩年まで顔出しの実写ドラマにこだわられていた点だろうか。これは何も特別なことでなく、声優は本来すべてイコール俳優なのだから当然といえば当然なのだが、実質は専業化する方も多い中で、ひとつの矜持ではあったろう。

瑳川哲朗さんは声のお仕事では、小山田宗徳亡き後のヘンリー・フォンダ、久松保夫亡き後のバート・ランカスターとレナード・ニモイ、山田康雄亡き後のクリント・イーストウッド、若山弦蔵でないショーン・コネリー……等々、失礼を承知で言えば偉大なるリリーフの感があった。

しかし彼らはいずれ劣らぬ大スタアであり、吹替陣もまたそうであった。おいそれと余人が引き継げるものではない。実写でも見せる重厚さや威厳をお声でも表現できる瑳川さんだからこその抜擢や依頼だったと思う。

2021年2月25日木曜日

リ・アルティジャーニ第28回「フィリピーノが見たもの」


「芸術新潮」3月号
は本日2/25発売です。ヤマザキマリ+とり・みき『リ・アルティジャーニ』 は第28回「フィリピーノが見たもの」

レオナルドの名声は高まりデッサンを飾るフィレンツェの修道院にも行列が。その中にはかつての流行画家ボッティチェッリの弟子フィリピーノ・リッピの姿もありました。

『リ・アルティジャーニ』は次回でいよいよ最終回となります。

2021年2月13日土曜日

プリニウス第74話「ムーターティオー」がくらげバンチで公開

ヤマザキマリ+とり・みきプリニウス』第74話「ムーターティオー」がくらげバンチで無料公開になりました。ガイウスは故郷のコモを離れローマをめざしますが途中で目にするものは......

若きプリニウスが初めて見る大都会ローマの景色は、同じく第Ⅰ巻でエウクレスがローマ入城したときのコマに構図を対応させています。

『プリニウス』74話については「新潮」掲載時のこちらのエントリーもご参照ください。

2021年2月6日土曜日

プリニウス第75話「リウィア」

「新潮」3月号発売されました。ヤマザキマリ+とり・みき『プリニウス』は第75話「リウィア」。時代はクラウディウス帝即位の頃、ガイウスはハイティーンになっていますが毎日のように図書館に入り浸っています。



これまでも作中にたびたび登場していますが、ガイウスの足もとにあるのはcapsaと呼ばれる巻物を運ぶ円筒形の容器です。古代ローマの用具は多くのレリーフやフレスコ画にリアルに描かれており、文献や出土品と照合されてかなり細かい部分までわかっています。

図書館はパラティヌスのアポロン神殿の脇にあった(基礎部分の遺跡が現存)図書館をモデルにしています。二つの棟が並んでいますが、古代ローマ時代の図書館の多くはギリシア語文献とラテン語文献の所蔵庫が分けられてツインで建てられていました。

新皇帝即位の喧騒をよそに調べ事に夢中なガイウスですが、そんな中、アントニウス・カストルの植物庭園に招かれ、そこで一人の女性と出会います。

特集は"創る人52人の「2020コロナ禍」日記リレー"。ヤマザキさんも参加しています(2/26〜3/3担当)。とりは書いてないけど複数の執筆者の日記に名前が出てきます。