『プリニウス』では第11巻75話「リウィア」に、このマルメロを登場させていたので、思わぬシンクロニシティに興味を引いた。マルメロは中央アジア原産だが、BC6世紀頃にはギリシア、BC2世紀頃にはローマに既に伝わっていたといわれている。
プリニウスはこの果実に並々ならぬこだわりがあるようで『博物誌』でもどの品種が生食可能かなど、やたらたくさん記述を残している。そのマルメロをうまくエピソードに使ったのはヤマザキさんのアイデアである。
さて、面白いのは、マルメロはやがてイベリア半島でも栽培され(マルメロはポルトガル語)中国経由で日本の長崎にも伝わり、ここから移植されて江戸前期には熊本=肥後の有明海沿岸で多く栽培されるようになる。その果肉を使って「かせいた」という献上菓子にもなるのだが、1792年の雲仙岳爆発にともなう山体崩壊による熊本側への津波被害、いわゆる「島原大変肥後迷惑」で肥後のマルメロ畑は壊滅してしまうのだ。この辺の経緯もプリニウスと因縁めいていて面白いと思ったのだった。
「かせいた」はその後カリンを使って作られるようになり、今も肥後銘菓の一つになっている。
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