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2020年6月18日木曜日

歩け走るな!


ツイッターの風野春樹さんのツイートで1966年の『歩け走るな!』(Walk, Don't Run)
がAmazonPrimeに入っていることを知ったのでやっと見た(ずっと見たかったが、昔出たDVDが今ではなかなか手に入らないのだ)。

64年のオリンピック時にケーリー・グラントが東京にやってくる、という映画なので『オリンピア・キュクロス』を描いているヤマザキマリさんにも教えてあげる。監督はMGMミュージカルの名匠チャールズ・ウォルタース。

話は他愛もないラブコメで、オリンピック選手が一般人のアパートに競技前日まで練習もせずに居候するなどユルユルなのだが、グラント以下の俳優が実際に来日しての東京都心でのけっこう大がかりな路上ロケにまず驚いた(この頃の日本物は実景だけ別班が撮ってきて、あとはスタジオセットとスクリーンプロセスで……というパターンも多かったですからね)。

当時の八重洲口、代々木、新宿、新橋、かちどき橋周辺で、主要な俳優込みでエキストラも動員して面倒そうな撮影をしており、映画冒頭で警視庁への謝辞も出る。この翌年には『007は二度死ぬ』の日本ロケもあり、その辺の許可関係はまだ鷹揚だったのか。その後80〜90年代には、日本は都市部での撮影がもっともやりにくい国としてハリウッドには(いや邦画関係者にも)悪評高くなっていく。

60年代の東京の実景を眺めるのもこの作品の醍醐味だが、もうひとつ驚いたのは、アメリカでのセット撮影部分もこの当時の映画としてはビックリするくらい(僕はそういう誤解描写が好きなので、がっかりするくらい)変なところが少ない。いや皆無ではない、お約束のようにトルコ風呂っぽい銭湯が出てきたりはするものの、しかし、おおおむね当時の東京の家屋や店舗の作りに違和感はなく小道具にも気が配られていて(台所にはライオンと花王の洗剤が仲よく並んでいる)、日本のスタッフがずいぶんかかわっているのかな、と思わせる。ドラマ上での日本人の描き方も対等だ。

そしてとり的に興味を引いたのが日本の裕福な家の子供たちがお茶の間のテレビで「日本語吹替の洋画劇場」を見ているシーンがあること。画面ではジェームズ・スチュアートが日本語を喋っている。作品は『ララミーから来た男』だろう。声はたぶん日系俳優で浦野光さんではない。こういう描写は面白い。

トレッキーにはジョージ・タケイが警察署長役で出ているのも見所。『二度死ぬ』にも出ている島田テルも登場。あと音楽がクインシー・ジョーンズなのだ。で、調べるとハモニカを吹いているのがトゥーツ・シールマンスだったりする。

ただ大スターだった「ケーリー・グラントの引退作品」にふさわしいかな、と考えると、その点だけはちょっと寂しい。

※ケーリー・グラントはイギリス生まれの(この映画にもイギリスの商社マンとして出てくる)1930〜60年代のハリウッドの二枚目スター。コメディアン出身なのは現在のトム・ハンクスとちょっと似ている。


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