
アレクサンドリアは当時のヘレニズム世界の叡智が集まった大図書館やファロスの大燈台などで有名ですが、文献にはその様子が記されているものの、遺跡そのものは現在では跡形もありません(燈台の一部の石材が後代の要塞に使われてはいますが)。
燈台はまだ14世紀までは存在し、ゆえに中世期の版画にもその威容が描かれていて、おおよそこんな形だったろうという一致した見解がありますが、図書館のほうは調べてもあまりわからない。描くほうの想像力に委ねられ、中世から現代のCGに至るまでその解釈は様々です。

いっぽう時代がやや下った、4〜5世紀のこの都市の悲劇の女性天文学者ヒュパティアを描いた映画『アレクサンドリア』に登場する図書館は、逆に古代エジプト風の建築様式を取り入れています。図書館の最初の建設はプトレマイオス期で、アレクサンドリアは同王朝の首都だったので、それもまた頷ける。ヒュパティアの時代には、かつてムセイオンに付属していた図書館はアウレリアヌス帝とパルミュラの女王ゼノビアの戦いによって焼け落ち、別場所にあった神殿付属のセラペイオン図書館がメインの収蔵施設として利用されていたようで、それを踏まえてのデザインなのでしょう。
ちなみに『アレクサンドリア』で図書館を破壊するのは当時の原理主義的なキリスト教徒であり、黒を基調とした狂信的な集団の描き方はまるで現在のISSを彷彿とさせます。スペイン製作の映画ですが、その俯瞰的かつ相対的で皮肉の効いた視点には少しく感心させられました。宗教や身分や政争を超え自然科学的な事実こそを是とするヒュパティア像にも共感を覚えますし、図書館や神殿のセットも(CGでだいぶ補完しているとは思いますが)かなり大がかりに作ってあってそれも見所です。

色んな資料を読むと、どうやら「アレクサンドリア図書館」という一つの大きな建物があったわけではなく、この都市の豊富な文献所蔵施設を総称して、そう呼ばれていたふしもあるらしい。そういうわけで『プリニウス』のアレクサンドリアは、エジプト・ギリシャ・ローマ風の建物が混在している形で描いています。図書館だって温泉旅館みたいに時代時代で建て増しがあったでしょうからね。
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