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2017年7月13日木曜日

奈良の春日野

フンフンフン。

というわけで奈良 パルミラシンポジウムに行ってまいりました。詳しくはヤマザキマリさんのブログを読んでいただくとして、まずは鹿と戯れる相方の人から。

ヤマザキマリのブログ:奈良で考えるシリアについてのあれこれ


オープニングの座談会の会場は公園内にある能舞台のホール。

既出の通り、ヤマザキさんが『美術館のパルミラ』で描いた、ISSに殺害された考古学者アスアドさんのご子息の出席はかなわなかったのですが(やはり警備上の色々な問題があるらしい)、ビデオメッセージで感謝の意を述べられていました。

オープニング・アクトで『棒縛(ぼうしばり)』を演じた大蔵流茂山千五郎家の方達は、今を去ること40年ほど前に小松左京さんにSFテイストの新作狂言を依頼、そうやって書き下ろされた『狐と宇宙人』の関東初演を、まだ学生だった僕は紀伊國屋ホールで観ています。「これはこのあたりに住まいいたす悪い宇宙人でござる」で始まりUFOの作り物なども登場する抱腹絶倒の演目で、悪い宇宙人は当然、当時1作目(後のエピソード4)が公開されたばかりの『スター・ウォーズ』に登場するダース・ベイダー風の衣装でありました。

さて、ヤマザキさんのブログでも触れられている、翌日のシリア人記者のインタビューには、僕も同席していました。

「あなたはマンガというツールで、シリア国内で起っている深刻で残酷な事態や政治情勢の真実を表現することが可能だと思っているのか」という、やや攻撃的な質問からインタビューは始まりました。日本のマンガ関係の取材では、なかなかこういう本質的で鋭い質問は出ません。

シリア人記者のインタビューは、あの地域の彼の世代がまだマンガという表現に懐疑的である上に、さらに内戦という現実がその背景にあるので、かつてシリアでの生活経験のあるヤマザキさんも、日本のマンガ文化の歴史についての説明から始めねばならず、苦労しているようでした。

同時に、マンガというメディアが早くから一般、かつ高学歴者や高年齢層まで浸透し、その文学性や芸術性(他分野におもねっているような言い方であまり好きではありませんが、とりあえず)も認められているという日本のマンガ文化の特殊性に、僕もマリさんもあらためて気づかされました。

近年、フランスなどでは評価がだいぶ変わってきましたが、まだまだ世界的にはマンガは子供や無教養な人が読むもので、小説や映画に比肩する思索や批評が表現されるような大人のメディアではない、という認識のほうが主流です。

しかし、インタビューが進むうち、実は記者氏の息子さんは現在マンガに夢中で、自分はそれが理解できない、という事実もわかってきました。彼にしてみれば公的なインタビューであると同時に、個人的な答を探る機会でもあったのかもしれません。

かなりの緊張を持って始まったインタビューでしたが、最後はマリさんが撮ったシリアの子供達の写真を媒介に話がはずむなど、よい雰囲気で取材は終わりました。

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