谷口ジローさんは『事件屋稼業』『青の戦士』のころから僕のスーパースターでした。矢作俊彦『マンハッタン・オプ』の挿画も大好きだった。『「坊っちゃん」の時代』から絵に明るさが入り、より親しみやすくなりましたが、初期の絵も後期の絵もどちらも大好きです。
僕程度の画力の者がいうと不遜で誤解されかねないですが、谷口さんの絵はある意味不器用だったと思います。であるがゆえに、本当に手を抜かず地道に丁寧に真摯に作画されていた。職人を極めてアーティスト側へ到達した方、という印象です。先日訪ねたアングレームでは、フランスの読者・マンガ家・編集者がみんな神のように谷口さんのことを讃えていました。日本でももちろん識者やマンガ通の評価は高かった作家ですが、それこそ映画でいえばクロサワクラス(内容の共通点を言及されるのは小津のことが多いけど)の知名度と尊敬を、かの地では得ていたのです。
しかし、何度か酒席をご一緒しましたが、御本人はまったく尊大なところがない、ごく普通の、でもとても素敵なおじさんでした。一緒に皆で温泉に行きましょう、という話をしていたのですが、もうかなわなくなった。残念です。
僕宛でなく相方の人宛のメールでありましたが、いま現在描いている『プリニウス』の感想を亡くなるしばらく前にいただきました。中身は書きませんが、そのお言葉が、いまも作画の大きなモチベーションになっています。
たくさんの作品をありがとうございました。
写真は某居酒屋にて、谷口ジロー、寺田克也、とり・みき、羽海野チカ、ヤマザキマリで描いた西遊記。
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