実業之日本社『筒井漫画涜本ふたたび』に僕は『わが良き狼』で参加したのですが、お読みになった方は最後のコマの special thanks to Fumihiko Takayama という文言に気づかれたはず。発売から既に2ヶ月が経過したので、そろそろこの謝辞の意味についてご説明したいと思います。なぜすぐにはしなかったかというと、ややネタバレを含んでいるから(なので未読の方は以下ご注意)。
Fumihiko Takayama とはアニメ監督/脚本家の高山文彦氏のことである(高は本当は異体字)。僕が脚本で参加した『WXIII機動警察パトレイバー』の総監督だ。『WXIII』の製作中も完成後も、高山さんと会うといつも本題そっちのけで色んな映画やアニメの話をしていたが、なかでもテックス・アヴェリー※の話題ではしょっちゅう盛りあがった。※いちばん有名なところでは『トム&ジェリー』の間に放送されていた『ドルーピー』の監督。
高山さんはまた熱心なSFファンで「伊藤典夫の弟子になりたかった」というほどの人だ。そんな高山さんとの酒席で、ある夜ひとつの新企画が提示された。筒井さんの『わが良き狼』をアニメ化できないか、というのだ。原作で回帰されるキッドの往時の活躍をテックス・アヴェリーっぽい40年代アニメ風、現在のパートをいまのリアル指向の日本アニメの緻密な作風で、というアイデアが、このときに高山さんから出された。というか、そもそも原作を読むと、キャラ造型からネーミングから、あきらかに筒井さんはアヴェリーの初期短編を意識して書いているようなふしがある。
ついては、筒井さん含むSFとアヴェリーが好きで、かつタッチを変えてギャグもストーリー物も描いている僕に「その脚本を書いてほしい」という話になったのだった。『WXIII』に続くコンビ作となるかもしれなかったこの企画だが、残念ながら実現はしなかった。
昨年になり実業之日本社のAさんから『ふたたび』の話が舞い込んだ。作品の選択はマンガ家の希望を優先するが、いちおう編集部のほうでも作家ごとに描いてもらいたい候補作があるという。僕は編集の僕への希望作品をまず尋ねてみた。Aさんの口から出たのは『わが良き狼』だった。もちろんAさんは上の経緯をまったく知らない。奇妙な縁を感じ、僕は高山さんにメールした。
こうして、アニメとしては陽の目を見なかったアイデアが、今回のマンガ化に活かされることになった。本文は自分なりに脚色・演出したが、冒頭の爆発の炎のカケラがトンネルの照明に転化するシーンなどは、まんま高山さんの演出アイデア通りである。
す、すごいなあ、、ぜひアニメ化も、、
返信削除そういう不思議な縁て、あるんですね。もう一度、筒井さんの原作読んで、とりさんの漫画読みました。
返信削除トムとジェリーのまん中話が見たくなってきました。(ドルーピーがそうだったとはしりませんでした。てっきり主に人物のでてこない、不思議な話しかあまり記憶に残っていないもので)
>sawさん
返信削除ほんとうに。
>いっちーさん
オフィシャルな綺麗な画質のコンプリートDVDが出ないものかと何年も思ってます(著作権切れも多くノンオフィシャルでたいていの作品は見てはいるのですが)
自分もアニメ化に期待しています!!
返信削除よんでみよう。。。