大塚周夫さんが亡くなられた。
ブラック魔王もねずみ男も稀代のピカロであり、主役ではあってもブロンソンもウィドマークも「いい人」ではない。そうした曲者キャラや俳優に関しては、他の追随を許さぬ役作りだった。
1995年に出した『吹替映画大事典』は現時点から見れば冷汗ものの誤謬や取材不足も多く、もはやリファレンス用としてはお薦め出来ないが、徒手空拳ながら吹替の価値を言挙げしたという意義はあったと思う。その冒頭で吹替の醍醐味の好例として引用したのが大塚周夫氏のセリフだった。
『続・夕陽のガンマン』終盤でイーライ・ウォーラックが「ごめんなさ〜い」と嘆願するシーンは原画では「Blondie!」とイーストウッドの役名を叫んでいるだけなのだ。だが大塚ウォーラックの芝居はこの最後の「ごめんなさ〜い」に収斂するように愛嬌を含んだ憎々しさで進む(演出:内池望博)。
吹替ファンのライター諸氏と作ったこの本、けっこう言いたい放題も多く、演者や演出家の方からどう読まれるかというのは戦々恐々だったのだが、のちに周夫さんに直接インタビューする機会を得たときに「この本は素晴らしい」といっていただきとても嬉しかった。作ってよかったと思った。
完声版と名づけられた追加収録版では他の方に比べ初収録時とお声の調子がほとんど変わらずその違和感の無さ・現役感に驚愕、晩年まで第一線で活躍された方だった。
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