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2016年8月1日月曜日

『DAI-HONYA』『THE LAST BOOKMAN』の電書化に際して思うこと

 
書店管理官シリーズの『DAI-HONYA』『THE LAST BOOKMAN』(原作:田北鑑生)が電書化されました。Kindle、iBooks、楽天、等主要電書書店で既に配信されています。

この2作品の電書化というのは皮肉めいててなかなか感慨深いものがあります。すでにこの2作をお読みになっている方は、その意味するところはおわかりと思いますが、未読の方もおられると思うので、ネタバレしない範囲で記しておきましょう。

『DAI-HONYA』が初単行本化されたのは1993年。CD-ROMやフロッピーディスクを利用した電子書籍用リーダーが発売されたばかりの時代でした。民間のインターネットもまだありません。原作の田北さんの先見性には驚くばかりですが、それもそのはずでこの頃彼は現役の書店店員だったのです。


1作目では「紙の本」を読む文化はいっきに衰退するかと思いきや、いびつな形で先鋭化・巨大化します。そうした本をめぐる犯罪に対処すべく登場したのが「書店管理官」という設定です。『DAI-HONYA』では主人公の書店管理官と書店テロリストの戦いを、巨大書店を舞台に描いています。

その続編『THE LAST BOOKMAN』が出たのは2002年。こちらでは書店管理官すら、もはや御用済みでお払い箱の時代になっています。今回の敵は世界中の情報を独占管理しようとする巨大配信組織の「調和社」。これもまた現在のAmazonやiTunesの隆盛を先取りしていた……と、まあそれくらいは作者が自分でいっても、内輪ぼめや自慢にはならないでしょう。

電書化が皮肉、と書いたのは、つまり、どちらも「紙の本」の終焉に抗った人々を描いた作品だからです。

さて、上梓してからだいぶ年月が経っているので、少しだけバックステージの話をしてもいいかもしれません。ここから先は既読の方向けです。といっても未読の人も結局読んじゃうでしょうから、そのへんはいちおう考えて書きます。

『THE LAST BOOKMAN』は『DAI-HONYA』の続編という形を取っていますが、少々成り立ちが異なっています。

『DAI-HONYA』はそもそも田北さんが読み切りのつもりで原作を描いてきた作品です。したがって原作はもう少しシンプルで短いものでした。しかし、描かれている世界背景がとても魅力的だったので、僕はこれを単行本1巻=連載12回くらいの長さで描きたいと思いました。

なので、原作に後から詰め込めるだけのギャグやサイドストーリーを詰め込んで膨らましました(その作業にはもちろん田北さんもかかわっています)。とにかくコマのどこかにはヒトネタぶちこむ、くらいの勢いで描いています。

いっぽう『THE LAST BOOKMAN』のほうは、最初から彼は連載物のつもりで原作を書いてきたのですが、今度は長すぎました。そのままマンガにすると足かけ3年=単行本3巻分は必要な話になっていました。

連載する予定の月刊誌は開始前から存続の危機が聞こえてきており(よい作品は多かったのですけどね)事実、連載終了直後にこの雑誌は休刊してしまいました。そういう事情もあって、これもまた前作同様単行本1巻の長さに収めたい、と僕は思いました。

ただし、前作はギャグで膨らましたのですが、今回は「削って」1巻分に縮めなければなりません。結果として、お話にあまり関係ないくだらないギャグの数は、前作ほど入れることは出来ませんでした。

もうひとつ、『THE LAST BOOKMAN』はデジタル作画を導入した最初の作品でもありました。当然試行錯誤はあり、現時点から見るとあまり洗練されていない使い方があちこちで見られます。まあこれはしかたがないですね。

話の内容に関しては、作者からつけ加えることはありません。

ただ、いまでもときどきオタクvsサブカルみたいな話がTLに流れてきますが、僕のオタク観、サブカル観、コレクター観というのは、全部『DAI-HONYA』の中に詰め込んでギャグとして昇華して描いたつもりです。これ以上につけ加えて言葉でなにか語ることは、20年以上経ちましたが、あまりありません。

既読の方は、そういう視点もちょっと気にとめて再読してもらえると、あらたな発見があるかもしれません。また、当方は「耐用年数の長いギャグマンガ」を描くのがモットーですから、20年以上見落としていたギャグの発掘もあるかもしれません。

そして新しい読者の方は、disりでもなんでもいいので率直な感想を聞かせていただければ幸いです。作者はいつでもエゴサーチしています。

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