翻訳家の浅倉久志さんが亡くなられた。
僕も含めたSFファンが「浅倉久志訳なら、まずまちがいなく面白い」と絶大な信頼を置いていた翻訳家だった。A・E・ヴァン・ヴォークト、ハリイ・ハリスン、ポール・アンダースン、マイケル・クライトン、ロジャー・ゼラズニイ、コードウェイナー・スミス、ジェイムズ・ティプトリー・Jr.、ウィリアム・ギブソン、トマス・M・ディッシュ、ジョン・ヴァーリィ、R・A・ラファティ、テッド・チャン……そして別格でフィリップ・K・ディックとカート・ヴォネガットのほとんどの作品を、僕らは浅倉久志訳で読んだ。
個人的にはSF大会でご挨拶する程度で、ちゃんとしたお話をさせていただいたことはなかったが、僕の大部分のSF分(鉄分の分です)と、そしてギャグ分の何割かもまた浅倉久志の訳文で出来上がっている。『ユーモア・スケッチ傑作展』(早川書房)という浅倉さんの編んだアンソロジーが好きだった。
拙作『SF大将』(ハヤカワ文庫)の元ネタにも、当然、浅倉久志訳の作品がたくさん入っている。あの中ではJ・G・バラードの『溺れた巨人』の評判がとくによかったのだけれど、その翻訳者である大谷圭二というペンネームも実は浅倉さんの変名(というか、こちらがご本名に近いのだけど)だ。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
R.I.P. Hisashi Asakura(1930-2010) who was a great translator in the field of Science Fiction. He translated many works of Kurt Vonnegut and Philip Kindred Dick.
翻訳界の巨星が墜ちた、という感じです。氏の魂はきっと、はるかな宇宙の果てまで飛翔することと思います。
返信削除あーっ、信じられないことに、野田さん、柴野さん、栗本さんも既にこの世にいないんですよね。
返信削除昨年から内外でビッグネームの訃報が続き、時の流れと、死は公平にやってくることをつくづく実感いたしました。